陶氏診療院

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笑いの中にある人生の気づき——道新寄席春風亭昇太独演会
3月12日、札幌市教育文化会館大ホールで開催された第246回道新寄席、春風亭昇太独演会のチケットが抽選で当たり、従業員とともに鑑賞に行きました。

日々の診療は忙しく、患者さんの健康と向き合う毎日の中で、ゆっくりと心を休める時間は決して多くありません。そんな中、久しぶりに劇場の椅子に腰掛け、落語の世界に身を委ねる時間は、まるで心の深呼吸のように感じられました。

開演直後のオープニングトークで、昇太師匠がこんな話をしていました。

ある日、自分の財布がカバンに入っていないことに気づき、職場から自宅まで思い当たる場所をすべて探しても見つからなかったそうです。落胆しながらも半ば諦めていたところ、なんと洗濯機の上で財布を発見。しかも、先日銀行で両替したばかりの新札もそのまま入っていたとのことでした。

失ったと思っていたものが戻ってくると、人は「損をしなかった」だけなのに、なぜか「得をした」ような気持ちになります。

その瞬間、ふと私は思いました。幸せとは環境や条件ではなく、心の感じ方の転換なのではないかと。

同じ出来事でも、見方が変われば意味も変わる。

人生とは、もしかすると「出来事そのもの」よりも、「それをどう受け取るか」という心の働きによって形づくられているのかもしれません。

この日の演目は「鷺と夕」「空に願を」「崇徳院」など。どれも古典落語ならではの味わいがあり、会場には何度も笑いが広がりました。

特に演目する前の話、今年東海大学四年生卒業予定の現役大学生で、大学生の学生証割引とシニア割引の話が出てきて、観客の笑いを誘っていました。日常のささいな出来事が、語り手の話術によって豊かな物語へと変わっていく——これこそが落語の魅力でしょう。

テレビ番組の笑点でおなじみの昇太師匠ですが、舞台で拝見すると、その語り口は軽やかで若々しく、会場の空気を一瞬で明るくしてしまう力を感じました。やはり芸というものは、生の舞台でこそ真価が伝わるものだと改めて思います。

落語は単なる笑いではありません。

笑いの中に、人間の弱さや可笑しさ、そして人生の機微がそっと織り込まれています。

医療の世界で長く仕事をしていると、人の苦しみや不安に向き合う場面が多くあります。だからこそ、こうして笑いに包まれる時間は、心を柔らかくし、人間らしさを取り戻させてくれるように感じました。

人生は、ときに重く、ときに軽い。

しかし、少し視点を変えれば、そこに笑いが生まれる。

落語の世界は、そんな人生の知恵を、さりげなく教えてくれるのかもしれません。

老中医の一言

失ったと思えば苦しみとなり、
戻ったと知れば喜びとなる。
人生の価値は、心の見方に宿る。
2026-03-14