陶氏診療院

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免疫抑制剤と抗がん剤
カテゴリー 生活の知恵
自分が医学博士号を獲得した研究内容は「免疫抑制剤」の制御メカニズムの研究です。研究テーマ:骨髄移植についてGVHD病態解析とその制御。

骨髄移植は完全に西洋医学の発想と治療法です。有効率は別として、人類の倫理からみて、まだ議論があります。ある宗教では、それを拒否するのも事実です。

骨髄移植は身体から見ると、他人の細胞が自分の世界に入る事です。臓器移植の時の防御反応は移植した臓器への拒絶反応です。拒絶反応の主役は宿主の骨髄からの免疫細胞です。ちなみに宿主対移植臓器への拒否反応です。

同様に、骨髄移植するのも、拒絶の免疫反応を起こします。免疫細胞対臓器の反応です。ただ、主役が違います。今度は骨髄(移植片・グラフト・graft)は免疫組織です。移植片にとって、臓器受給者(宿主・host)の身体は異物であり、宿主のすべての臓器へ攻撃するように免疫反応が起こり、それらの症状の総称は移植片対宿主病(graft versus host disease; GVHD)です。

GVHDが発症しないように骨髄移植や輸血を成功させることが最大の難関です。GVHDを発症させない為に免疫抑制剤を使います。有効な免疫抑制剤の研究に四年間を費やし、研究論文を発表しました。臓器移植や骨髄移植などの移植手術を成功させても、免疫抑制剤は一生使います。

副作用や危険性のない免疫抑制剤は存在しない。大部分のものは非選択的に作用するため、免疫系は感染や悪性新生物の拡大をうまく抑えることが出来なくなり、高血圧、異脂肪血症、高血糖、消化性潰瘍、肝臓や腎臓の機能障害などの副作用を起こす。免疫抑制剤は他の薬剤の代謝や作用に影響することもあります。免疫抑制剤の長期服用により、悪性リンパ腫などの悪性新生物発症がよく発表されます。

西洋医学で使われる免疫抑制剤は移植の領域の応用だけではなく、原因が良く分からない炎症や細胞の増殖を含め広い範囲で臨床応用されました。

一つはがんの化学療法での応用です。

がんとは身体の免疫低下により異常な細胞が増殖し続ける病気です。西洋医学では病因がはっきり定まっていません。ですから、がんからでた症状や腫瘍の塊への対処療法しかないのです。ですからがんの治療に細胞成長抑止、増殖阻止薬や細胞障害性(細動毒性)薬、または代謝拮抗薬等免疫抑制剤を使う事で、免疫を低下させるという治療方法が患者さんからみてどこか違和感を感じたとしても無理はないのです。

その時、西洋医学の「聡明」さが使われ、利尿剤を血圧を下がるため使うときは「降圧剤」と言うように、がん患者への免疫抑制剤使う時、薬の名前は「抗がん剤」と変わりました。

それも「種明かし」として、皆さんがもしがんになったら、治療時に参考にしてください。

できれば、皆さんが予防医学で、健康を維持して、どんな病気でもならないように健康生活を送りましょう。
2013-02-26