陶氏診療院

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旧正月のお見舞い
カテゴリー 日本
1月30日、中国の旧正月(正月初二)のことです。約束していた上海からの30代の友人が、突然訪問をキャンセルしました。理由は、友人のご主人が急性虫垂炎で緊急入院し、手術を受けたためです。現在も入院中とのことでした。

私は友人がまだ日本に来ていないと思っていましたが、次のメッセージには「札幌の天使病院に入院中」とあり、病室の番号まで書かれていました。そして「会いたい」とのことでした。

私が心配したのは手術そのものよりも、医療費のことでした。保険に入っているか尋ねると、旅行保険には加入していなかったとのことです。家族でスキーを楽しむ予定で北海道に来たのですが、出発前に友人から「ケガをするかもしれないから保険に入ったほうがいい」と勧められたにもかかわらず、「大丈夫」と思い、加入しなかったそうです。

日本のクレジットカードには、海外旅行のトラブルに対応する一定の保険が付帯していることが多いですが、彼は中国の銀聯クレジットカードしか持っておらず、海外医療保険は別途購入しないと補償が受けられないとのことでした。そのため、病院代はすべて自己負担になり、大変だったようです。ただ、現在の円安の影響で、人民元で換算すると多少負担が軽くなるかもしれません。

30日の夜、診療を終えた後、FFCパイロゲンを持ってお見舞いに行きました。外科の個室はホテルのように広く、ご主人の隣には奥さんが貸しベッドで付き添っていました。

ご主人は腹腔鏡による虫垂切除術を受け、下腹部に小さな3つの傷があり、それぞれ細いテープで保護されていました。私はその上からFFCパイロゲンをスプレーし、できるだけ歩くよう勧めました。手術後、盲腸の写真を見せてもらうと、手のひらほどの大きさに腫れており、痛みの原因がよく分かりました。さらに、中には親指の第一関節ほどの大きな糞石(ふんせき)があり、これは長年の蓄積によるものだと考えられます。

話を聞くと、27日に小樽を観光中、突然腹痛が起こり、夕方には顔色も悪くなったため、救急診療を受け、天使病院に搬送されたそうです。主治医によると、「あと2時間遅れていたら、盲腸が破裂し、腹膜炎になる可能性があった」とのことでした。手術は順調に終わり、退院も翌日と早いものでした。

旅行中の急病で、観光から療養に切り替わり、日本の先進医療を経験することになりました。これはまさに「医療体験観光」とも言えるでしょう。

友人は17年前に北海道大学に留学しており、日本語が流暢です。そのため、病院の看護師からも「日本人かと思うほど敬語や発音が上手」と褒められていました。彼女が付き添っていたおかげで、病院側に通訳を依頼する必要もなく、診療がスムーズに進み、とても助かったとのことでした。

話は変わりますが、この若い夫婦は上海の証券会社に勤め、収入も良く、海外旅行を楽しめるほどの生活を送っています。しかし、観光中の急病のリスクを考えると、中国からの旅行者も、事前に保険に加入することの重要性を再認識するべきかもしれません。
2025-02-01