陶氏診療院

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「風呂(26)の日」―中医学から見る入浴の力
カテゴリー 生活の知恵
2月6日の「風呂(26)の日」に加え、2026年は「お風呂(026)の年」とも言える節目の年でした。そう考えると、日本人と西洋人の生活習慣の大きな違いの一つは「風呂」にあると言っても過言ではないでしょう。

日本に来て以来、毎日お風呂に入ることが日常の習慣となりました。出張や海外に行く際も、ホテルのお風呂や温泉を楽しみにしています。

先日、娘と息子を連れて小樽の日本のお父さんの家にご挨拶に伺いました。長男夫婦と日本のお母さんが小樽のレストランで昼食をご馳走してくださり、楽しい時間を過ごしました。話題は海外で暮らす娘の近況や将来の結婚の話に及び、外国人の体臭の話から自然と「お風呂文化」の違いにも話が広がりました。

中医学の視点から見ると、入浴は単なる清潔のための習慣ではありません。温かい湯に身をゆだねることで、体表の経絡が開き、「気」と「血」の巡りが促され、滞りが解けていきます。特に現代人に多い「気滞」や「血瘀」の状態に対して、入浴はやさしく働きかけ、心身の緊張をほどきます。

また、温かいお湯は体内の「陽気」を補い、冷えによって弱った臓腑の働きを助けます。冬の寒さが厳しい地域では、入浴はまさに“外からの養生法”と言えるでしょう。寝る前の入浴は心神を安らげ、「気血」が調和することで、自然な眠りへと導いてくれます。

健康の面から見ても、日常的な入浴や温泉に親しむことは、身体を温めるだけでなく、巡りを整え、未病を防ぐ知恵です。しかし、寒冷地や水資源の制約などから、日本ほど入浴文化が生活に深く根付いている国は多くありません。古代ローマにも浴場文化がありましたが、現代の生活習慣としてここまで継承されているのは、日本の大きな特徴でしょう。

私は上海出身で、28歳まで上海で暮らしていました。子どもの頃、住んでいた家には風呂がなく、月に一度、祖父が私たちを公衆浴場に連れて行ってくれました。夏は冷水シャワーが日常でした。日本に来て、どの住まいにもお風呂があることに感動し、まるで天国のように感じたことを今でも覚えています。

日本には湯治という伝統療法があります。温泉に身を置き、自然の力を借りて「気血」を整え、心身を回復させる智慧です。古代エジプトでも、入浴や食養生によって労働者の健康が守られたという話が伝えられています。時代や地域を超えて、人は温めることで生命力を養ってきたのです。

健康のため、日々の入浴を、ただの習慣としてではなく、「気を巡らせ、血を養い、陽気を守る養生の時間」として大切にしてみてください。湯に浸かる数分の静かなひとときが、心の緊張をほどき、身体の内側にある調和の力を呼び覚まします。忙しい現代だからこそ、毎日の風呂を通して自分自身と向き合い、未病を防ぎ、健やかな人生を育んでいきましょう。
2026-02-28