陶氏診療院

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老衰死と病死
年を取ると、自分の宿命を考え、いつか訪れる旅立ちを意識し始めます。身辺整理をし、エンディングノートを書きながら、同時に子供や孫、ひ孫たちの成長を楽しみ、悔いのない終末を迎えるよう努めるでしょう。

診療院に通っていた患者さんも、病気を乗り越えた後、いつか自分の人生の終点を迎えることを自覚しながら、毎年年末の「喪中はがき」を見て、皆さんの老衰死を見送ってきました。

昨年6月に膵臓癌と診断された84歳の男性患者さんは、高齢であったため、主治医は大きな手術や抗がん剤、放射線治療を薦めませんでした。余命半年と告げられ、治療の方針は本人に委ねられました。

この男性は14年前に前立腺癌と肺、骨への転移を経験し、陶氏診療院に通い完治しました。その経験から、自分の力で乗り越えられると考え、再び診療院の施療を受け始めました。奥さんや家族の応援を受け、自分の人生を自分で決めることにしました。余命半年と言われたにもかかわらず、年末の東京同窓会*に参加することができました。

年末の時点で余命半年と告げられた時期を越えた彼は、元気を祝い、翌年3月3日に三重県津市赤塚の実験農園・鈴鹿の森庭園の研修**に参加しました。美しいしだれ梅を見て、本人も車いすから立ち上がり、散歩しました。

先月、腫瘍の圧迫による影響で食欲が徐々になくなり、緩和病棟に入院しました。彼は亡くなったお母さんの顔をよく夢に見るようになり、お母さんが迎えに来たようだと話していました。

先日、奥さんからラインにメッセージが届きました。「今日16:35頃、握っていた手の脈が触れなくなり、静かに旅立ちました。3月の鈴鹿の森の枝垂れ梅を見せてあげられて良かったです。ありがとうございました。」

そのメッセージを見て、患者さんが苦痛が少ない中、ほぼ老衰死に近い形で終末を迎えたことにほっとしました。人生は最後まで自分で選ぶことができ、幸せだったと思います。

*84歳すい臓がん患者さんの同窓会 http://www.tao-clinic.com/blog00.php?id=4214

**春を先に体験する http://www.tao-clinic.com/blog00.php?id=4364
2024-06-13