陶氏診療院

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荘子の空船理論と感情管理
荘子(紀元前4世紀から3世紀の戦国時代の宋の哲学者で、『三国志演義』などに登場する南華老仙)の思想は、「無為自然」「大道廃れて仁義あり」「聖人生まれて大盗起こる」などで知られる老荘思想で、最も重要視されるのは「道」です。彼は儒家の大家でもありました。

疾病は気から生じ、その気は内と外に分けられます。外部要因には飲食、環境、感染源、災害などがありますが、内部要因にはほぼ人の感情が含まれます。人々の七情六欲(喜び、怒り、哀しみ/憂い、恐れ、愛、憎しみ、欲望と生、死、聴覚、視覚、嗅覚、味覚、触覚)によって生まれる感情は、五臓六腑に影響を与え、現代医学では難病とされることもあります。

感情をコントロールする最も有名な方法は、荘子の空船理論でしょう。荘子は「ある人が船に乗って川を渡ろうとしたとき、向こうから一艘の船がやってきてこちらの船とぶつかりそうになった。その人は大声で何度も向こうの船の人に呼びかけたが、反応がまるでなかった。そこでその人は向こうの船の人を大声で非難した。しかし、向こうの船が近づいてきたとき、船の上には誰も乗っておらず、「無人の船」であることがわかった。そこでその人の怒りもすぐに収まった。」

ぶつかってきた船はいろいろなできごとや例えにより、「人が乗っていたか否か」によってその人の怒りが左右されているということです。荘子からは、でき事を空船と見なせば、感情をコントロールする知恵を教わります。

日常生活では数えきれないほどの出来事が起こり、感情をかき乱すこともありますが、荘子の空船理論を思い出せば、悪い思いをすることなく、自分の感情を管理することができるでしょう。

訳注:荘子の『莊子』山木篇に記された空船理論の原文は以下の通りです。

「方舟而濟於河,有虛船來觸舟,雖有惼心之人不怒。有一人在其上,則呼張歙之;一呼而不聞,再呼而不聞,於是三呼邪,則必以惡聲隨之。向也不怒、而今也怒。向也虚 而今也實。人能虚己以遊世、其孰能害之。」訳:舟を方じて河を済(わた)るに、虚船の来たりて舟に触るるあらば、惼(へん)心ある人と雖(いえど)も怒らず。一人、其の上に在るにあれば、則ち呼びてこれに張歙(ちょうきゅう)せしむ。一たび呼びて聞かず、再び呼びて聞かず、是(ここ)に於いて三たび呼ばんか、則ち必ず悪声を以ってこれに随わん。向(さき)には怒らずして今や怒るは、向(さき)は虚にして今や実なればなり。人能く己を虚にして以て世に遊べば、其れ孰(たれ)か能くこれを害せん。
2024-04-16