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科学と哲学
カテゴリー 論文発表
90年前、中国に西洋科学が広まり始めた頃、中国の学術思想界で「科学と哲学」の学術論戦がおきました。

当時(1923年2月14日)、学者張君勱が中国北京の清華大学で「人生観」の講演をしました。科学万能論の傾向を批判したのです。その後、地質学界の学者丁文江が反ているのではなく、科学万能の傾向に疑問と注意が必要だと言っているのです。論し「人生観も主観ではなく、科学の公理、定義と方法の支配するもの」と断定し、丁学者が張学者を「玄学鬼附身」(哲学は玄学とも言われ、附身:身体に付いている)と呼ぶなど、こうして科学と人生観の論争が勃発しました。

主観性を強調する張学者と科学主義(科学本来の意味ではなく、科学万能論)をこだわる丁学者、二人は友人ですが理論の論戦となるとお互いの感情が入り過ぎどちらも一歩も譲りません。そんな中、中国の思想界の大物梁啓超は、張学者を支持する立場で論戦に加わりました。

張学者と梁学者の考えは反科学を主張し科学が近代社会の進歩に貢献したことは言うまでもないことです。でも、科学主義(科学万能)の考えだけが正しいとするのは危険です。90年前、中国の有能な学者が科学主義の人生観へのマイナス面を指摘しました。実に展望性的な発言だと思います。とても尊敬できます。

科学と哲学、90年前から考え方の違いによる論争をはじめ、結果的には科学主義を優先する学者が国の発展戦略を左右し、その傾向は中国国内にずっと影響を与え続きて来ました。一つの例として分かりやすい事例では、現在の中国国内での西洋医学と中国医学の発展の現状があるかと思います。

日本の社会と似ているように、伝統医学(中国医学)の衰退、西洋医学の過剰な医療関与、国の医療費の膨張とともに、社会の医療問題(病気が増え、適切な予防、治療ができない)も拡大し、国の財政状況にも悪影響がでています。一日も早く科学万能の考え方から科学本来の考えに戻り、哲学と科学のバランスの取れた社会システムができてほしいと思います。医学から見ると西洋医学と中国医学のバランスが取れた医療体制、いわゆる陰と陽のバランスが取れた医療体制がよりよい社会の発展に繋がるのだと私は思うのです。
2013-01-29