陶氏診療院

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中医学の先進性
カテゴリー 講演会
第29回日本統合医療学会学術大会初日のランチセミナーにおいて、東京大学の酒谷薫先生より「統合医療における中医学の新展開―フラクタル・カオス理論とAI応用―」と題した講演が行われました。本講演は、中医学の持つ先進性を改めて示す非常に示唆に富む内容でした。

酒谷先生は、1995年に北京の中日友好病院を訪問された際、中医の仝小林(どう・しょうりん)先生と出会い、漢方薬「丹参」注射液が脳循環に及ぼす薬理効果に強い衝撃を受けたことを契機に、中国医学の研究を本格的に始められました。講演では、陰陽五行学説が、現代の先端科学であるフラクタル理論、カオス理論、さらには複雑系科学と深く関連していることが、理論的に分かりやすく解説されました。

カオス理論とは、初期条件のわずかな違いが、将来的に予測不能な大きな変化を生み出す現象を扱う理論です。一方、フラクタルとは、全体と部分が相似形を繰り返す「自己相似性」を特徴とする構造を指します。これら二つの理論は密接に関連しており、その視点から陰陽五行学説を捉えることで、中国医学が本質的に高度な複雑系医学であることが理解できます。

今回の講演を通じて、西洋医学を専門とする研究者からも、中国医学の先進性に対する理解と評価が示されたことは、大きな意義があると感じました。長年臨床に携わってきた立場として、この流れを大変うれしく思います。

人体は本来、極めて複雑なシステムであり、単純な古典物理学的発想のみでは十分に理解することは困難です。その発想を基盤として発展してきた西洋医学が、人体の多様で動的な変化すべてに対応しきれないのは、ある意味で必然とも言えます。

中国医学は、人類が積み重ねてきた知恵と経験を基盤に、実践と結果によってその先進性と有効性を証明してきました。今後も、予防医学や健康増進の分野において、さらなる貢献が期待される医学体系であると確信しています。
2025-12-24