陶氏診療院

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中国文化に見る“進数”の知恵
古代中国の文化をひもとくと、「数」で世界を説明しようとする独特の知恵に出会います。
私たちが普段使う10進法だけでなく、生活や哲学の中でさまざまな“進数”が使われてきました。その多様さは、現代でも驚くほどです。

まず基本となるのは「2進数」。陰と陽、光と影、男と女――世界のすべてを二元で捉える考え方です。『易経』の八卦(「八進数」)、や六十四卦(「六十四進数」)はこの思想から生まれ、やがて現代コンピューターの基礎理論にもつながりました。

「3進数」は天・地・人を示す「三才」の思想。「4進数」は四方・四季・四象など、自然界の秩序を表します。「5進数」は火・水・木・金・土の五行として、中国医学や宇宙観の根幹を形づくりました。「7進数」は七曜・七情の概念で、天文・人の感情などの応用に役に立います。

そして最も広く使われるのが「10進数」です。0から9までの数字を0、1、2、3、4、5,6,7、8、9と、すべて一音節で発音できる、一筆で書く言語は世界的にも珍しく、言語は世界的にも珍しく、中国語がその代表です。

この「単音節の数詞体系」は、数の組み立てや計算をきわめて簡潔にし、古代中国で10進数が自然に発達した理由でもあります。

さらに「十、百、千、万、億、兆」と、桁を表す言葉もすべて一文字で表現でき、天文学的な数字まで簡潔に表せる――これは世界で最も早く完成した10進数体系の言語文化といえるでしょう。

「9進数」は九九の計算表や風水の九宮に見られるように、完成と極致を象徴します。

「12進数」は干支や時刻の区分に使われ、時間の流れを管理する上で欠かせません。

「16進数」は斤や両など重量の単位に使われ、「半斤八両」という諺は「どちらも同じ」という意味で今も生きています。

さらに「24進数」は太陽の運行を基にした二十四節気として暦や農耕を支えます。

「60進数」は干支を組み合わせた六十甲子として年号の循環を表しました。人は二つの甲子を生きて百二十歳になる――そんな言葉も中国医学に残ります。

こうして見ると、古代の人々は数を単なる計算の道具ではなく、宇宙や生命を理解するための「哲学の言葉」として使っていたことが分かります。
進数の多様さは、中国文化の奥深さと、自然と人間を一体として捉える叡智の象徴と言えるでしょう。
2025-10-11