陶氏診療院

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ドクター陶の健康コラム・連載・vol.29 挨拶の暗号 健康への思い
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高陽社の月間コーヨーライフ2022年八月号に、「ドクター陶の健康コラム・連載」。内容を紹介します。

挨拶の暗号 健康への思い

日本では、人と会う時の挨拶は「元気ですか?」です。
中国医学には、まさに日本の日常の挨拶と同じ言葉「元気」について勉強する時間があります。

日本国語大辞典の解説によると、「元気」は、①天地間に広がり、万物が生まれ育つ根本となる精気。②活動の源になる気力。心身の活動力。また、国家や組織が存続する上で必要な活力。③体の調子がよくて健康なこと。気力、勢力が盛んなこと。また、そのさま。とありました。

中国でも「元気」は、やはり人、国、組織の活力を指します。辞書には次のようなことが書いてありました。「元気」とは中国道家の哲学用語で、万物を構成する原始の物質であり、生命を構成する基本的な物質概念です。また「元気論」は最も起源が古く、広く影響のある中国の伝統的宇宙観の一つです。その宇宙観は完成された思想系統として、古代中国の科学認識のさまざまな領域に浸透し、各種の自然現象の説明と理解に使われました。老子など多くの道家の著作にも、「気」にまつわる内容が書かれています。

日本の挨拶「元気ですか?」の「元気」には、これほどに奥深い歴史の積み重なりと、宇宙の認識に刻まれた気持ちが感じられるのです。

ちなみに近代の中国の挨拶は「ご飯を食べましたか?」略して「食べましたか?」でした。これも考えてみると、ご飯は元気をつくる元。哲学的な「元気」が、庶民的な会話のなかで「ご飯」の言葉に変わりました。もちろん、近代には食料不足の背景もあり、もし相手に食べ物がなく、自分に余裕があれば、家にどうぞ来て、食べてくださいという意味もありました。

挨拶の言葉から生命にまで思いを巡らしましたが、東洋人の生命観、宇宙観は素朴で美しいですね。なお英語の挨拶「ハウアーユー」(how are you?)にも、体調を確認する意味があります。まず挨拶で健康に関心をもつというのは、人類共通の感覚なのでしょう。
2022-08-04