陶氏診療院

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中国医学と哲学②
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① 中国医学の存在論――「世界は何でできているのか」

中国医学の存在論は、極めて明確です。世界の本体:気(氣)、状態の分化:陰陽、運動の法則:五行、基本思想:生成変化(固定された実体はない)です。

『黄帝内経』において、「人は天地の気を受けて生まれる」、ここでは、人・自然・宇宙は同一原理で成り立つ。

宇宙の気・自然の気・身体の気は質が違うだけで、本質は同じ存在。

つまり中国医学の存在論は「分離しない存在論(非二元)」です。

② 中国医学の認識論――「世界をどう知るのか」

中国医学は、「正確に測る」よりも「全体の偏りを読む」ことを重視します。

認識の特徴は:関係性の認識です。単一臓器ではなく、臓腑間・人と自然の関係、動的認識です。病は固定したものではなく、流れの偏り、体感と経験知から、望・聞・問・切などデータより人を通した感受性から確認します。

西洋医学が「何が壊れたか」を問うなら、中国医学は「なぜその偏りが生じたか」を問う。

存在を「気の流れ」と捉えるからこそ、認識も「流れとして読む」形になる。

③ 中国医学の価値論――「どう生きるべきか」

中国医学における最高の価値は明快です。

養生(ようじょう)= 天地と調和し、病を生む前に整える生き方;治未病(病気になってから治すのは下策);中庸(やりすぎない・偏らない);順四時(季節に逆らわない)

ここでは善=自然との調和、悪=過剰・停滞・逆流、つまり、生き方そのものが治療。

④ 三つが“自動的に一体化”する構造、ここが中国医学の本質です。

【存在論】世界は気でできている

【認識論】気の偏り・流れを読む

【価値論】気を乱さない生き方を選ぶ

存在と認識が一致している、認識と価値が矛盾しない、だから「理論」と「生活」が乖離しないです。

中国医学では、正しく世界を理解すれば、 自然に正しい生き方に至る。

⑤ 西洋医学との決定的な違い
観点    西洋医学   中国医学
存在論 物質・構造 気・関係・生成
認識論 分析・数値化 読解・統合
価値論 治す・除去 整える・育てる
理論と生活 分離    一体
⑥ 一言で言うなら

中国医学とは、「宇宙の成り立ちをそのまま、人の生き方と医療に落とし込んだ、統合哲学である」

だからこそ中国医学は医学であり、生活倫理であり、予防医学であり、哲学で続けた。
2025-12-11