陶氏診療院

アクセスカウンター
<- 5 / 13 ->
9
ドクター陶の健康コラム・新連載・vol.11 感染症対応の戦略と戦術
高陽社の月間コーヨーライフ2021年二月号に、「ドクター陶の健康コラム・新連載」。内容を紹介します。

感染症対応の戦略と戦術

事を成功させるには、すべて戦略と戦術の両面があります。両方のバランスがとても大事で、どちらが欠けてもうまくいきません。

感染症対応の戦略は、感染源を特定し抑えること、感染ルートをすべて止めること。そして感染者の早期治療ということになるでしょう。

そして感染症対応の戦術は、戦略を実現する方法です。これまで培ってきた科学の方法で、感染源の特定ができます。新型コロナウイルスは弱い病原で、冷凍と乾燥には強いですが、普通の環境では宿主がなければ2週間で自然に死滅してしまいます。つまり感染ルートを絶つには、「隔離」が大変有効です。ウイルスに接触しない、手洗いやうがいで消毒する、個人の免疫力を向上するなど、できる事はたくさんあります。

14世紀に流行した「黒死病」(ペスト菌感染)は、わずか数年でヨーロッパ全土に広がりました。この流行は18世紀まで続き、この間ヨーロッパの人口の3分の1から3分の2が減ったとも言われています。

このような有名な逸話があります。17世紀、英国中部ダービーシャー州のイーム(Eyam)村・通称「ペストの村」では、村の仕立て屋にノミの湧いた布がロンドンから持ち込まれたことでペストの感染が始まりました。この病気が他の村に広がるのを食い止めるため、村のモンペッソン牧師は、村人全員が村を出ることを禁止する、当時としては注目するべき自主的な隔離を提案しました。ほぼ全員がそれに従い、イーム村は孤立状態に。そして344人の村民のうち、267人が死亡しました。しかし近隣の村々は感染を免れ、黒死病はイギリス北部に広がることなく収束したのです。

ウイルスは、地球上に人類より長く暮らす「住民」です。打ち勝つことではなく、平和に付き合っていくしかありません。小さな犠牲で、隔離と言う対応の基本を守り周囲の人々を救ったこの逸話は、現在でも感染症対応の戦略と戦術の参考となるでしょう。
2021-02-06