陶氏診療院

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ドクター陶の健康コラム・新連載・vol.6 二つの代謝
高陽社の月間コーヨーライフ2020年九月号に、「ドクター陶の健康コラム・新連載」。内容を紹介します。

二つの代謝

生命の誕生は、無酸素の環境から始まりました。そして地球上に酸素が増えるとともに、生物は進化し多様化していきました。人類も酸素を吸うことで細胞のミトコンドリア内で大量なエネルギーを生み出すことができ、大脳も発達して、地球上の生物の頂点に辿り着きました。

生命の進化が示す通り、人間は二つの代謝(エネルギーを作る仕組み)を体に備えています。無酸素性代謝と有酸素性代謝です。一般的には無酸素運動・有酸素運動という言葉の方が馴染みがあるかもしれません。人間は運動をするとき、酸素を使ってエネルギーを作ります。しかし激しい運動のためにそれだけでは間に合わなくなると、体は無酸素運動に切り替えます。無酸素運動ではたくさんの糖質を分解して、一気にエネルギーを獲得しますが、一方で乳酸などの代謝物もたくさん作り、体は疲れを感じることになります。

無酸素性代謝はグルコースをエネルギー源とし、細胞の分裂と成長を促進します。

一方、有酸素性代謝は脂肪酸をエネルギー源とし、細胞の修復と維持を行います。両方とも大事な生理代謝で、私たちの毎日の健康を支えています。

急病で呼吸が苦しくなり、生命活動が低下するとき、救急車内では、まず酸素吸入を行います。新型コロナウイルス肺炎の重症患者も、呼吸困難、つまり経皮的動脈血酸素飽和度(SPO2)が90%未満になると酸素吸入を行います。

酸素吸入ですべての低酸素症状を改善するわけではありませんが、酸素が体内に届くことで無酸素性代謝から有酸素性代謝に転換ができます。体は修復と維持の力で、病気を乗り越えます。

このように、人間の体は低酸素の環境下では一時的に無酸素性代謝に切り替え、瞬発力で生命を維持します。

そして、長期的な健康長寿には持続力を発揮する有酸素性代謝が大切になるでしょう。

新型コロナウイルスの流行を乗り越えるため、体を修復し、免疫力が向上する、有酸素性代謝を意識してみませんか。
2020-09-20